高来神社との出会いは、祭りの賑わいから
大磯を歩いていると、一号線沿いに屋台の明かりと人だかりを見かけたことがありました。楽しそうな雰囲気に引かれて立ち寄ったのが、今思えば高来神社のお祭りだったのです。
当時は20代で、ただ「にぎやかで地元の人が集まってるんだな」という印象しかなく、神社の名前も、その意味も正直わかっていませんでした。けれど今回、大磯の魅力を調べていく中で、ふとあの賑わいを思い出し、「あれが高来神社だったんだ」と気づいた瞬間、懐かしさと驚きが同時にこみ上げてきました。
調べてみると、そこには思っていた以上の歴史とストーリーがありました。
改めて知る、高来神社の由緒と歴史
高来神社(たかくじんじゃ)は、大磯町に鎮座する歴史ある神社で、古くから「大磯総鎮守」として地域の人々に信仰されてきました。
御祭神は「高來津姫命(たかくつひめのみこと)」という海の神様で、もともとは航海の安全や漁業、雨乞いなど海と水にまつわる信仰の対象でした。江戸時代の記録にもその名が見られ、相模国における格式ある神社の一つ「式内社」にも数えられていたとされています。
社名の「高来(たかく)」という響きは珍しく、一説では海を越えて渡来した神を祀ったことに由来するとも言われています。
また、周辺地域の農業神としての役割も持ち、五穀豊穣や家内安全を祈る場として、代々受け継がれてきました。
源頼朝が戦勝祈願に訪れたとされる神社
高来神社には、源頼朝との深い関わりが伝えられています。
治承4年(1180年)、源頼朝は伊豆で挙兵し、相模国を通って鎌倉へ向かう途中、大磯に立ち寄ったとされています。その際、戦勝を祈願するために参拝した神社が、この高来神社だったという説が残っています。
当時、鎌倉にはまだ鶴岡八幡宮がなく、頼朝にとってはこの地が最初の祈願所とも考えられています。後に鎌倉を本拠とした源氏にとって、この大磯の神社が心の拠り所の一つであった可能性もあるのです。
この伝承は、神社の境内にある石碑や資料にも記載されており、地元の人々の中では「頼朝公が立ち寄った由緒ある神社」として語り継がれています。
境内の静けさと、周辺スポットも魅力的
高来神社の境内は、駅からそれほど遠くない場所にありながら、喧騒から一歩離れた静かな空間です。石造りの鳥居をくぐると、どこか凛とした空気が漂い、木々に囲まれた境内はまさに“心が整う場所”といった雰囲気。
社殿は落ち着いた木造の建築で、こぢんまりとしながらもどこか荘厳な雰囲気を感じさせます。境内には石碑や由緒書きもあり、源頼朝とのつながりを感じることができます。
また、高来神社を訪れたあとは、照ヶ崎海岸や旧吉田茂邸へ足を伸ばすのもおすすめ。
アクセス情報|高来神社への行き方
- 所在地:神奈川県中郡大磯町高麗2丁目20-1
- アクセス:JR東海道線「大磯駅」から徒歩約15分。バス「高来神社前」下車徒歩3分
- 駐車場:近隣に有料パーキングあり
まとめ|子どもの頃の記憶が、歴史とつながった
子どもの頃、大磯の祭りの賑わいに惹かれて何気なく足を運んだ高来神社。大人になった今、改めてその場所を調べてみたら、源頼朝とのつながりがある由緒正しい神社だということを知りました。
高来神社は、華やかさよりも静けさの中にある凛とした力を感じられる場所です。海の町・大磯の空気とともに、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか?
この記事を書いた人:芦原 真司(あしはら しんじ)
湘南・大磯を拠点に活動する旅ラン作家。マラソン大会やバイク旅、地元の観光スポットを体験ベースで発信中。
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